◂ 箱庭機構ポータルへ戻る 倫委 第百十八号 / 審査部 第一 / 写
委員会について / COMMITTEE ON WORLD ETHICS

当 委 員 会 の 職 務

当委員会は、箱庭次元研究機構の提携先ではない。同機構の設立を認可した監督機関である。この区別は繰り返し指摘されているが、いまだ正しく記載されていない。

職務は、発生した箱庭世界の観測・記録・管理に関わる一切の行為が倫理的に許容されるかを審査することにある。世界は作られるものではない。発生するものであり、当委員会も機構も、これを管理しているにすぎない。

ここでいう倫理とは、現存する世界と、そこに生じた住人に対して、これを観測し管理する側が負う責任を指す。ただし観測は、実質的に世界を開く行為に等しい。物語を書く自由は問わない。問うのは、観測した側に何ができるかではなく、観測された側に何が起きるかである。

審査は申請に基づいて行われる。委員は席次番号でのみ記録され、氏名は残されない。決議は全会一致による。よって遅い。

審査の四領域
次元の開設
発生した箱庭世界の観測を開始する申請。観測の開始は、実質的に世界を開く行為にあたる。閉じ方が定まっているか、記録の系統が確保されているかを審査する。
表現と意匠
物語・人物・図像の審査。実在との誤認、住人の尊厳、意匠の使用許諾を扱う。
閲覧権限の等級
どの記録を、どの権限まで開示してよいかの裁定。黒塗りの範囲もここで決まる。
機関間の紛争
提携機関のあいだで生じた事故について、責任の所在を調停する。
審査の三原則
第 一 原 則 閉じられない世界を、開いてはならない。 開設──すなわち観測の開始──の申請には、その世界をどう閉じるかを先に記載することを要する。観測を停止すれば、世界は自然に消滅する。ゆえに閉じ方は必ず定めうる。定めずに開いた場合、住人ごと放置されることになる。当委員会が最も多く差し戻すのは、この一点である。
第 二 原 則 記録されない者を、作ってはならない。 世界に住人が生じるのであれば、その記録の系統が確保されていなければならない。記録されずに閉じた世界の住人については、当委員会は何も述べることができない。述べる手段が残っていないためである。
第 三 原 則 実在の被害を、素材にしてはならない。 現実側の観測値を演出に用いる行為について、当委員会は一律には禁じていない。ただし、被害の生じている事象を素材として扱うことは認めない。この点については、境界線観測財団より同旨の申し入れが先に行われている。

審査の結果は、認可・保留・差戻のいずれかである。差戻に回数の制限はない。 当委員会は再提出を禁ずる権限を有しない。有するのは、認可を停止する権限のみである。 書類一枚で次元はひとつ閉じる。その一枚を、当委員会はこれまで三度しか用いていない。

以下は、実際に発出された勧告書の写しである。書式は当委員会の定めによる。

委員会審査之印

勧 告 書

箱 庭 世 界 倫 理 委 員 会

倫委 第百十八号 機構暦 二二〇年 第三十六観測週

箱庭次元研究機構 幹部会 宛。

提携協力機関の寄稿文書が、機構の公式領域に掲載されている件について、下記のとおり指摘がなされる。

一、当該文書には発行主体が明示されているものと理解される。しかしながら、掲載されている領域が機構の管理下にある以上、読者が発行主体を誤認する恐れは払拭されていないと考えられる。

二、前項の恐れは、当該文書の内容が機構の見解と相違する場合において、とりわけ重大となる。

三、なお本件について、貴機構より当委員会への事前の照会はなされていない。照会を要する旨は、認可条件第七項に記載されている。

四、以上により、掲載の表示を強化することが勧告される

五、本勧告に法的拘束力はない。ただし、勧告に対する対応の有無は、次回の更新審査において参照される。

──なお本勧告は、前回および前々回と同一の内容である。

委員第三席 名を記さず

◂ 右から左へ読む / 横に送って続きを読む

審査記録 / 当期

審 査 の 実 績

当委員会は全会一致主義を採る。よって決議は遅い。委員は席次番号でのみ記録され、氏名は残されない。

受理件数
四一二
差戻件数
三三〇
差戻後 中止された案件
次回 更新審査
機構暦

差し戻された案件のうち、中止に至ったものは確認されていない。多くは数値を改めて再提出される。 当委員会は、同一の案件が何度提出されたかを数えている。数えることのほかに、できることはない。

審査申請 / 受付

審 査 申 請 書

申請区分を選び、申請の内容を記載のうえ提出すること。審査は当委員会が行う。異議の申立ては受け付けない。

審 査 結 果
差戻

未提出。

発出した通牒 / 抄

各 機 関 宛 通 牒

→ S.H.R.O.S.

本期に受理した実験申請のうち、八割が差し戻された。中止された実験は確認されていない。差し戻しの意義について、貴研究所の見解を求める。

倫委 第百九号 ※ 回答は「数値を改めて再提出する」の一行であった

→ VOID Tech
Industries

星喰残滓の製品化に関する審査は、申請から認可まで七年を要した。これは当委員会の遅滞ではなく、申請書の記載が七度改められたことによる。

倫委 第八十八号

→ A.C.A.S.

作戦後報告の全文掲載について、確認手続きの記録の提出が勧告されている。回答はいまだ受領されていない。

倫委 第二百四号

→ 箱庭次元
研究機構

機構内部に、当委員会へ申告されていない部署が存在するとの指摘がある。当委員会は証拠を有しない。よって本件は指摘に留める。

倫委 第二百十一号 ※ 回答期限を過ぎている

通牒に強制力はない。回答の有無は記録され、次回の更新審査において参照される。 当委員会が行っているのは、記録することである。